2011/10/05

其の名は、エスプリ・ド・サムライ① : アナログ写真の逆襲

銀塩写真






かつて新宿のカメラ量販店の地下階は、ある種の神聖さが支配していた。

メトール フェニドン ハイドロキノン 亜硫酸ナトリウム チオ硫酸アンモニウム…


棚に並ぶ小箱や瓶のラベルには、許された者だけがアクセスできる秘密の符号が記されていた。

そしてそれらの薬品を目的にそって扱うためのあらゆる道具が、通路の両側に門前の市のように並んでいた。

そしてその奥にこの王国の中心、清潔で無骨な神殿のようにそびえ立つ引き延ばし機たちがいた。

さらに奥の棚には、様々な大きさ、様々な種類の印画紙が積み上げられていた。

まだ光を見たことがないその紙たちは、静かにたっぷりと銀を含み、
遮光パッケージの闇の中で真っ白なまま眠っていた。






銀塩写真




…。

カメラ店に、いま彼らはもういない。
わずかに残った暗室関連商品達は、店の片隅で蛍光灯の光にさらされ退色し、デッドストックの値引き札を貼られ、誰からも無視されながら、ただ処分される日を待っている。

あの王国は滅びたのだ。

薬品のにおいと水音のする写真暗室の暗がりは、モニターの光によって駆逐された。
われわれは進歩したのだ。
われわれは不便と不健康から解放されたのだ。

そうなのだ。
われわれは、写真の闇の時代から、解放されたのだ!





だが、ほんとうにそうだろうか。

光はなぜ存在するのか。

それは、闇があるからではなかったか。

闇のない世界というのは、実は虚構に過ぎないのではないだろうか。

写真は光の国だ。
そしてその光は、闇の中から生み出されたのだ。

光がある限り、写真の闇が滅び去ることはない。







カメラ量販店の片隅で絶滅の運命に直面している、写真暗室関連商品たち。
次々と生産は中止され、補充されることなく消えていく商品たち。

だが、ここに、思いもかけなかったような新製品が登場した。
私はいま、写真の暗室の話をしている。
当然、この新製品も写真暗室のために作られたものだ。

そして、たしかに、これはこの時代の暗室作業に必要なものだった。

この製品。

その名は、

エスプリ・ド・サムライ!!


其の名は、エスプリ・ド・サムライ②へ続く



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